新参者たちについて
3坂道は、全体としては何度も、あるいは常に比較され続けてきたけれども、「ほぼ同期」ということで比較されてきたことはなかったように思う。正確には合同オーディション組は比較されたけれども、上村さん一人しか日向坂に入らなかった合同前期は三坂で比較されたとは言い難いし、研修生組は、一緒にツアーを回った印象の方が強いし、個々のグループでは加入人数が少なかったので、大きな影響力とは言えなかった。
今回の新参者には、その前に日向坂の4期がTBSのセルフドキュメンタリーで他の二坂とどうしても比べてしまうと述べたところから、比較の構図がもたらされたようにも思える。ある意味では、ならいっそ比較させてやるぞ、今回はどこも10人を超える規模だから横一線で比べられるだろう、という公式の挑発とも言えるのが「新参者」ライブなのだろう。だから、僕も比較というわけではないけれども、それぞれのイメージを書いておこうかなと思う。
まず乃木坂5期生。これは本当にすごい。ピンで売れそうなメンバーが圧倒的に多い。個人的に坂道などの大人数アイドルの仕組みは、「まず人数多いから見てみてよ」と客を集めて、その中からそれぞれが自分の推しを探すことで、ピンで売るのには向かないけれども魅力のあるひとに人気が出るというものだと思っていて、そこが個人的に好きでもある。
僕が推していた深川さんが、ピンのオーディションに受かったかと言えば疑問だし、そもそもAKBの前田さんだってピンでは売れないだろう。だから、ここで言うピンで売れる、ということはその人の総合的な魅力とは一致しない。一瞬ですごいと思わせて、さらにどこか情報的なすごさ、「ほらすごいでしょ」と友達にスマホで見せられて、ちょっと情報を足すくらいで、伝わるすごさを持っていないといけない。
この点、僕は井上さんはもちろん、五百城さん、一ノ瀬さん、(メンタル的にはグループ向きだけど)富里さん、それに小川さん、みんなピンでタレントで売れたと思っている。ビジュアルあり、能力あり、そして悪い癖が目立たないので万人受けする。特に五百城さんと一ノ瀬さんはとんでもないと思っている。松村さんとか真夏さんをより汎用的にしたような。ということは山下さん、もっと言えば長濱ねるさん辺りのような逸材というか。
そこにさらに、割と早く一芸が伝わり、そのあとで内面の良さや面白さが伝わるメンバーがゴロゴロいる。この辺りのメンバーも、五人くらいの少人数グループでも見つかっていると思う。
逆の言い方をすると、坂道グループの大人数の構図だから売れているメンバーは少ない。たとえば日向坂なら今、平尾さんや宮地さんが伸びているけれども、乃木坂5期で、知れば知るほど人気が出るという枠で見事にハマったのは川崎さんだけだと思う(川崎さんの一芸はフィギュアスケートだけれども、川崎さんのファンは彼女がフィギュアスケートが得意だから推しているわけではないだろう)。本当は菅原さんもこの売り方にした方が良かった。いま、初期より内面などがずっと魅力的になったのに、最初にビジュアルだけで推した人たちが勝手にがっかりして、かわいそうなことになっている。菅原さんについては、僕が初めて書いた記事で「菅原さんについてはどうもすでに人気が出ているらしい。個人的には、ほぼフラフープだけで判断するのはあれだけれども、まだアイドルらしい魂が完成していない素人らしい感じがして、むしろ原石タイプなのかなと。ファンの期待のタイミングが早すぎると、チャンスを与えても掴みきれず、必要なときにチャンスがこないということにもなりそうなので、運営さんの技量が試されるなと思ったり」と書いた。運営というより、ファンが勝手に期待したのが悪い。
櫻坂3期生は逆に、というとあれだけれども、それほどピンで売るのが自然と思えるひとはいない。それこそ一瞬で印象に残り、ダンスができて、トークもできる、谷口さんくらいだろうか。そこは運営も、櫻坂ファンはコアなファンが多いというところに懸けたのかも知れない。知れば知るほど魅力的な、スペック高めメンバーが多い。そもそも谷口さんが勉強もできるのが、あのキャラクターとして今までになく面白いのだけれども、さらにオールラウンダーは村井さんだけでなく、中嶋さんもお得感が強く(ルックス・知性・コメディセンス、そしてダンスもけっこう上手い)、小島さんや的野さんも万能系。櫻坂とその前身の欅坂にはカルト的な人気があり、カルト的な人気にはどこか知性が漂うものだけれども、その意味で、ダンスの櫻坂と言われるグループにダンス+能力、とりわけ知的なメンバーが集まっているのは納得もいくし、今後の強みでもある。
正直に言うと、櫻坂3期が外向けに一発で爆発する予感はない。ダンスが上手いメンバーが多く、個人的には村山さんが一番ルックスとダンスだけで言えば目を引くと思うけれども、彼女は代表者にするには事故りそうでもある。平手さんのような当たり方は起こらないと思う。でもクリエイターの意図の理解度が高そうなメンバーが多いので、団体芸でここからすごいところを目指せそうでもある。個人的にはダンスで採っていないメンバー、とりわけ遠藤理子さんを入れたことの意味が良い方に出たとき、他を上回って伸びていくのかなと思ったりしている。
カリスマの集合の乃木坂5期生と、ダンスが(基本的には素人を集めるという前提の)坂道離れしている櫻坂3期生を見て劣等感を覚えざるを得ない日向坂4期。たしかに説明の言葉が一瞬で出しにくい期ではある。とはいえ正源司・藤嶌の2トップは、全く別のタイプなのにどちらもセンター感の強い素晴らしい組み合わせで、そこに渡辺さんもいるから将来性は抜群。個人的には、やや性格に癖ありではあるけれども、やはり初期の運営と同意見で、清水さんも素晴らしい人材だと思う。ルックス・ダンス・運動神経、それにキャプテンシーもちゃんとある。乃木坂でも映え負けないし、櫻坂にいてもダンスで活躍できるレベル。この辺りを軸に据えれば集団はまとまるし、そのうえで個性の広がり方は三坂道で一番ある。みんなどこかおかしいけれども、フォローし合えている。ライブでは個性のばらけ方から生まれるエネルギーのようなもので他の坂道を圧倒していた。乃木坂のライブは安心だし、櫻坂のメンバーはディレクターの意図に従え過ぎる。振り返って、日向坂の1期こそまさに、みんな変わっている期で、それがピンチにまとまった(+小坂さんという年少の軸が定まった)結果すごいことになったので、そのよい後継者なのではと思う。イマニミテイロは歌うに相応しかったし、魂がこもっていると感じた。
ところで、イマニミテイロと隙間ってAメロ似てて驚いた。あと、制服のマネキンのサビっていまの乃木坂5期でも正確には踊れないんだなとか、自分の中で南流石さんの再評価が起こっている。そして考えないようにするに「超絶かわいい」コール入れる人は、歌詞とは違って考えないようにしても苦しくないだろうなと思った。無粋。