欅坂メモ417 3rdシングル 個人PV感想

2ndシングルの個人PV感想はこちら

ネタバレあり。2度目見た感想はこちら

TYPE-A
オダナナさん:
アイドルのPVとしては助演さんが喋りすぎ目立ちすぎで主演を食ってる気もしないではないけど、シュールな狙いはかなり良いラインを何度も突いていて、ありふれてないのはもちろん、感動のBGMと音程のズラした歌の組み合わせに代表されるデタラメな効果の使い方がかなり適切だから、謎の説得力がある。手を抜いてない感じが伝わってくるので創作として好き。

小池さん:
トーテムボールっていう渾身のギャグから、一応トリックっぽい浮き輪の仕掛けあり、トーテムポールの説明あり、カナダ赴任の妙な納得感あり、感動の物語ありの隙のない短編が作られていて、文句のつけようがないと思う。小池さんのコメディ好きのキャラとも良く合っていて、ファンが増えるだろうと感じる要素も十二分にある。

齋藤さん:
バカムービーとしてはしっかり作られている。悪役が激しくなりきった演技してるのと男の子のセリフが棒読みなのとのコントラストが良いと思う(齋藤さんはもう少し激しい側の表現でも良かった気がする)。スタッフクレジットにタミヤが入っていて、少年とのトークのところで後ろにタミヤロゴのラッカーが映っているのなんかも(そして愛機がアバンテというのも)ミニ4駆ファンにはたまらないけど、作り手ではなくアイドルのファンからは、どこが個人PVなのか分からない問題作でもあるかもしれない。

土生さん:
ラテン語のエピグラフから始まるなんて洒落ている。作中の引用は「愛の名言集」みたいなのから見つくろってそうだけど、ディレクターさんが博学なのだと思って見たほうが楽しい。土生さん本人が好きそうな設定でノリノリでやっているのは個人PVとして明らかに長所。中盤少し長いかなって気はしたけど、「両親の都合で吸血鬼」っていう渾身のギャグのためにタメを作ったのかなと思うと、やられたと思えたので良作かなと思う。ところで土生さんに早口で喋られると叱られてるような気がするんだけど、Mっ気のあるひとにはたまらないんだろうか。

平手さん:
普段深いものに触れてないひとがほんとに深いものを見たって分からないわけで、そういう人たちに「うわー、深い」って感想を抱かせるのは、実はそんなに深くないものだったりする。この、素人目に深く賢く見えるくらいの謎めいた作品を狙ったのなら良いかもしれないと思う。ちなみに2ndシングルの平手さんPVはほんとに深かった。なお個人PVのスタッフロールでメインキャストと監督の名前だけを並べて(他のスタッフと分けて)デデーンと映す発想には恐れ入る。

守屋さん:
アート系で1st/2ndシングル基準からすると良い方で、BGMが特に良いのかなとは思うけど、オチがスタイリッシュ感ないこともあって、力作揃いのTYPE Aでは見劣りする印象。いっそオチ付けないほうが、BGVとしては品があって良かったんじゃないかって気もする。ファッションとか、運動の仕草はかなり様になっていて、魅せるものになっているので。あるいは、水の入ったペットボトルを蹴って、タバコのポイ捨てしたひとの頭に当てて、その後、転がったペットボトルからの水で火が消えたりしたらスタイリッシュかなあ。

米谷さん:
これは「乃木坂浪漫」の正統な後継者を思わせる。木の上をバランスとって歩かせることで、さっそく少女の素の表情を引き出すのは良いアイデア。少女が自分の部屋に並べる本に混じってアンドレ・ジッドの原書が置いてあるなんて洒落ていて、ほんとに浪漫。画面の隅で草原を走ってるカットも好き。よねさんはブログで滑舌を気にしていたけど、この作品は化粧っ気のないメガネの少女のあどけなさが魅力なのと同じで、友達が読み聞かせてくれるように聞こえるこのままの感じが良い。読書することで本の世界に入り込むっていう、それを映像化しただけなのに、こんなにも憧れと懐かしさを感じる。よねさんの魅力を良く引き出した名作だと思う。

ベリカさん:
これまで2回のPVは、素のベリカさんを引き出すPVだったけど、今回はできるベリカさんへの期待を込めた作品で、それによく応えている。冒頭で消しゴムを激しく使うところから、もうベリカさんらしくない凶暴性を自然に表現できていて、そこからも可愛さと思春期らしい興奮と暴走、それに狂気が入り交じった絶妙な凄みを(それでいてオシャレな雰囲気を)監督もベリカさんも呼吸を合わせて表現している。雑な褒め方をすれば、フランス映画のうわべだけ借りる作品が少なくないなかで、ほんとにフランス映画してるPV。


TYPE B
石森さん:
全体のB級っぽさのなかに、ときおり石森さんの表情が見せる本物感が花火のように光って、未完成だけど成長していくっていうアイドルの本質が上手く表現されていると思う。石森さんの表情って少し下がってる眉もあって、困ったり弱ったりしてるときにも魅力的なので見たくなるんだけど、この作品は挑発する側も石森さん自身なので、あんまり罪悪感なくその困ってる表情が見られるのも良い。走らせてるのは、同じ走らせるのでも2ndと違う魅力的な作品が撮れるっていう挑発かな。

今泉さん:
今泉さんっていうどこかわざとらしさとそれでいて純粋さを矛盾せずに感じさせる希有な存在を、このわざとらしく落ちてくる無邪気な天使っていう設定に放り込んだ抜群のセンスから、間違いなく面白いと思った通りで、見ていて至福のひとときだった。こういう、作品としての面白さとメンバーの水を得た魚のような躍動感が両立されてる作品を見ると、ほんとに嬉しくなる。最後は突然終わっちゃった感があるけど、そんなのどうでも良く、これは最高に魅力的な今泉佑唯。助演の方もすごく良かった。

尾関さん:
尾関さんは、真剣にやりながら喜劇を成立させることで、リアリティとコメディっていう越えるのに手こずる2つの世界を簡単に結びつけてしまう。その腕はさらに磨きがかかっているし、台本も1302で坊主と読ませるか上手いなと思うし、ネタも豊富なんだけど、見終えてあと一歩物足りなさが残った。たぶん、尾関さんは暴走して無理に何かを押し通す力を持ってる(つまり筋に無理があったりするのを尾関スタイルで許させてしまう)、いわばナンセンス芸の持ち主なんだけど、今回はわりと破綻がなく綺麗なはなしだったから、その異次元の尾関スタイルを味わいそびれたのかもしれない。ところで細かいけど、本人がアリバイを「証言する」って「主張する」のほうが自然な気はする。

小林さん:
正直、自分はオダナナさんみたいに何やってる小林さんもかわいく見えてしまうけど、それを差し引いたらわりとひどいレベルだと思う。いろんな格好・表情をした小林さんを見せてあげるっていう意図だと思うんだけど、広告の「普通の小林のみ」とかロボットのサイマジョダンスみたいな小ネタはあっても、これだけいろいろ出しておいて、話を面白く畳めないのは勿体ない。小林さんがなぜ住人と話をしたらいけないのか、なぜそのアドバイスを大家がするのかも分からないし、といってナンセンスとしても落ちているわけでもない。

さとしさん:
バレエの得意なさとしさんがバレエを踊る作品、としか言いようがない。それが見たいひとには余計な味付けがないから良い作品だし、何か味付けするのは喜ぶひともいれば批判するひともいるだろうから、味付けを避けるのが一概に悪いとも言えないし。優良可で確実にファンにとっての良を狙いに行った作品。

菅井さん:
意味が分からない。ごめんなさい、僕がバカなだけかもしれないけど、これはシュールレアリスムを狙った、特に意味がないものを敢えて、ベタも肯定される個人PVの形で存在させるという極限アートなのか、それとも筋が通っているのに自分が理解できてないのか、それさえも分からない(学級委員という設定すら特に生きている気がしない)。せめて謎を探る気にさせて貰えたらと思ったけど、そういう気力も起こらなかった。

鈴本さん:
予告通りの内容で、予告したものを手堅く撮った感じ。オチが何かあったらより良かったのと、ドアを叩いてるときの台詞がもう1,2パターンあるとより楽しかった気はするけど、でも取っ手を引っ張ってからのシャワーを浴びて無になる心境とか、コメディーなりにリアルでよくできている。ナレーションと本人の語りの分業も優れてるし、鈴本さんの語りは聞きやすい。あとはたとえばお風呂場でねじ回しみたいなのを見つけて、自分で窓枠をはずそうと試みるような、リアル鈴本さんのエピソードとのリンクがあっても面白かったかもしれない。

原田さん:
この手のものだと、乃木坂の中元さんが「チューしちゃうぞ」を生み出した1stシングル個人PVとの比較になるんだけど(ところで、これのなかで「欅坂46」って台詞が出てきてビックリした!)、アイドル経験の長い中元さんが完成度高いのに比べると、原田さんは得意フレーズの「聴いて聴いて」にも緊張が混ざる初々しい出来。言葉遊びとしては中元さんのほうが、音楽自体の完成度では原田さんのほうが上で、バスケットボールのバスドラ音は十分音楽としてノれる。謎の豆腐を食べるインターバルはわりと好き。不満は特にないけど、例えば題名の「ねえねえ、聴いて」が音素材としてはあまり生きてないのもあって、原田さんの必然性は感じなかった。

TYPE C
上村さん:
この台本は、まるきり上村さんというよりは、上村さん憧れの齋藤飛鳥さんに当て書きされているような気がする。口が悪くて生意気だけど、大人に言うことを聞かせちゃう感じで、実は良い子でホロッとさせる。そんな性格の少女を上村さんなりに頑張って表現しているから入り込めたし、物語は意表を突く展開で、最後は個人PVに期待するレベルを越えて感動してしまった。ショートムービーとして傑作の部類だと思う。廊下の泣きまねのところ、同じ旋律を繰り返してるのは、予告のgifを思わせて面白くて好き。

志田さん:
ドラムの叩けない志田さんがドラムを叩く作品、としか言いようがないけど、映像的セリフ的なおまけはあるし、そもそも経験がないひとが叩く映像っていうだけでも新鮮だからちょっと意味があるようには思われる。ドラムという楽器が行進するビートのような意味合いを持つし、リズムがよれながらも叩き続けるところは足がよろめいても歩き続けるという意志の表現になるわけで、とはいえすごく斬新というわけではないから、期待値どおりのできかなと。

長沢くん:
バイオリンの弾ける長沢くんがバイオリンを弾く作品、としか言いようがない。ただ、さとしさんと違って、夢が欅坂の曲を弾くことだとファンは知っていただけに、そうでない曲だったことに肩すかし感は否めない。何か、その曲についてのエピソードを話してくれるとかのおまけがあるだけでもありがたいんだけどな。バイオリンを弾く表情は好きだけど、ちょっと期待外れ。

ベリサさん:
ベリカさんとラブレターネタで被るという、メタ的にちょっと面白い展開。しかも2人とも渡せずじまいで、手元には読まれることのない手紙を握って。それでもアプローチの違いはふたりの魅力の違いを示していて、ベリサさんは口を開かないほうが表現力があって、表現したいことがあるのに口からは出てこないその瞬間に一番気持ちが表に出る。当然、そこに相応しい感情は苛立ちで、だから物語は苛立ちに終わる。高校生の不条理な苛立ちがよく表現された作品。

ねるさん:
ねるさんには自分ルールが似合う。一本道をそろそろと歩くのも、駆け抜けるのも似合う。屋上の向こうに映る緑の山並みも似合う。笑顔も似合う。真面目な表情も、悩んでる表情も、情けない表情も、はにかむ表情も似合う。「ルールは破るためにある」なんて結論はお説教じゃないんだからと思うけど、この作品にとって「ルール」にまつわる話は導線に過ぎなくて、友達とのくだらないやりとりだったり好きな人を遠巻きに見てる瞬間だったりがしっかり繋げばそれでよい。この少女は実際のねるさん自身ではないのに、この作品の中のねるさんもしっかりこの世界に生きているのが伝わってくる、というのが優れてると感じる理由。

ひらがなけやき:
長い。お得。自己紹介と、笑顔で楽しいところ、その両方をカメラに収めるという目的を自作十二人一首というやり方で解決して、その方向性がぶれていないのでファンの喜ぶ良いPVだったと思う。ところで、漢字・ひらがな・カタカナで一番相手に伝わるのは漢字だと思う、表意文字だし、種類も多いし。
- 短歌の一部感想。影山さんのは才女らしく、「炭水化物ダイエット」というちょっとユニークでリズム感のよい七五を見つけているし、「がんばるぞ おー」のややトリッキーな締め方も面白い。かとしさんのおそるおそる笑いを取りに行った自信のなさはキャラが出てる。齊藤さんの上の句はお見事で文句のつけようがない。「ん」「っ」「-」の多さでリズムが良いし、代名詞の「ラーメン」と「きょんこハート」っていう関連性のない言葉を「トッピング」で結びつけたのも理想的なアイデア。高瀬さんのは「まな」と「かな」で脚韻を踏みつつ、「届くかな」を繰り返して「届いて欲しい」とすることで、一度閉じた句を開き直して自問自答する感じがすごく良い。これが倒置せずに「みんなの心に 届いてほしい」だったらいかにダサいことか。ねるさんのは「まるくやさしくやわらかく」が、本人の言うとおり授業のひらがなの特徴をいかしつつ、「清く正しく美しく」みたいな標語のパロディになっているし、冒頭から最後まで一貫して文としての「ルールを破って」いるのがセンスある。助詞もないし、終止形で終わる動詞も形容詞もない、順番的にも主語となる「ひらがなけやき」が最後に来ている。それが許されるのが、字数のほうでルールを作った分、構造には緩やかな詩という遊戯の良さ。


今回の総評:

上村・今泉・小池・米谷・ねる・ひらがなけやき・ベリカ
鈴本・ベリサ・石森・土生・尾関・オダナナ・志田・原田・齋藤・さとし
守屋・平手・長沢・小林
菅井

これまでの2回に比べると、全体に高い評価がつけられると思う。見た実感としての満足度も非常に高かった。特に上村さんから小池さんまでの3作は個人PVとしてこれ以上を望んではいけないと思うくらい完成度が高くて、かつ個人に寄り添いすぎない完全な創作ドラマでそれを達成している事実に言葉を失ってしまった。逆に失敗するとえらいことになるアート系作品が守屋さんの1作(広く言えば志田さん原田さんもそうだけど)くらいだったこともあって、大外れはほとんど無かったと思う。監督さんは前回・前々回と数名ずつ重複していて3作連続も何名か。なかでも、前々回の動物園小池さんと前回のビデオレター長沢くんを撮った杉山弘樹さんが、今回も、長尺のひらがなけやきを任されてしっかり手堅い仕事をなさってるあたりは尊敬するしかない。

2016.11.30 | Comments(0) | Trackback(0) | 乃木坂・欅坂

«  | HOME |  »

FC2Ad

プロフィール

Author:tieckP(ティークピー)

だいたいどこでも曲を作って、自作曲には詞も書いてましたが、文章を読み書きするのが特技で、最近は欅坂46さんのブログや番組についてメモをとる日々です。乃木坂さんはずっと深川さん推しです。 twitterのアカウントも@tieckP。メールアドレスもtieckP+gmail.com(+の代わりに@で)です。お気軽に連絡どうぞ。

最近のトラックバック

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索